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住宅宿泊事業の届出概要について
2020年に新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延し、一時はロックダウンによる移動制限の影響で大きく落ち込んだ観光需要ですが、昨今はインバウンド需要が回復し、都市部においては特に宿不足が深刻な課題となっており、民泊が再注目されています。今回は民泊を運営するにあたって必要な手続きの1つである「住宅宿泊事業」届出の概要について徹底解説します。
目次
1. 民泊とは
2. 住宅宿泊事業の定義
3. 住宅宿泊事業の届出について
4. 住宅宿泊事業の届出に必要な事項・書類
4-1.届出事項とは
4-2届出時の添付書類
4-3. 添付書類に関する補足事項
5.まとめ
1. 民泊とは
「民泊」についての法令上の明確な定義はありませんが、一般的には住宅(マンションなどの共同住宅や戸建住宅)の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することを「民泊」と表現します。
また、我が国においても、近年急増する訪日外国人観光客(インバウンド)の多様な宿泊ニーズへの対応や、少子高齢化社会を背景に増加している空き家の有効活用といった地域活性化の観点から、民泊に対する期待が高まっています。
他方で公衆衛生の確保や、地域住民等とのトラブル防止のためのルールづくりをはじめ、無許可で実施されているもの(いわゆるヤミ民泊)も問題視されており、その対応の必要性が生じていること背景に、健全な民泊サービスの普及を図るため、平成29年6月に住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)が成立しました。
平成30年6月の住宅宿泊事業法の施行以降は、日本国内でいわゆる「民泊」を行う場合には、
1.旅館業法(昭和23年法律第138号)の許可を得ること
2.国家戦略特区法(平成25年法律第107号)(特区民泊)の認定を得ること
3.住宅宿泊事業法の届出を行うこと
などの方法から選択することとなります。今回は、住宅宿泊事業法の届出(必要書類)についてご紹介します。
2. 住宅宿泊事業の定義
住宅宿泊事業は、
1.旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、
2.人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと定義されます。
住宅宿泊事業を実施することができる「住宅」は、台所、浴室、便所、洗面設備が備えられた施設である必要があります。また、居住要件として、下記のうちいずれかを満たす必要があります。
1.現に人の生活の本拠として使用されていること
2.入居者の募集が行われていること
3.随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていること
3. 住宅宿泊事業の届出について
住宅宿泊事業を行うためには、住宅宿泊事業届出書に必要事項を記入の上、必要な添付書類と合わせて、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に届け出る必要があります。
保健所設置市においては、市長(政令市、中核市等)、特別区においては区長(東京23区)が届出先となります。
また、自治体により、市区町村条例を独自に設けていることもありますので、申請前には独自条例が定められているかについて調べておく必要があります。特に、京都市をはじめ、国内の人気観光地においては独自に条例を設けているケースが多いです。
自治体が独自条例を制定する背景としては、昨今はインバウンド需要が過熱しており通常以上に周辺住民への配慮が必要ということが実情のようです。人気観光地で民泊運営を検討の方は特に留意することをお勧めします。
なお、住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととしていますが、自治体により紙媒体での郵送・または窓口への持参提出、一部持参を求めているケースもありますので、申請前に自治体の民泊関係Webサイトを確認しておくと良いでしょう。
4. 住宅宿泊事業の届出に必要な事項・書類
4-1.届出事項とは届出をする場合に届出書に記入が必要な事項として定められている内容は以下のとおりとなります。
前述の民泊制度運営システムに下記の情報のうち届出形態により必要となる項目を入力していきます。
1.商号、名称又は氏名、住所
2.【法人の場合】役員の氏名
3.【未成年の場合】法定代理人の氏名、住所
(法定代理人が法人の場合は、商号又は名称、住所、役員の氏名)
4.住宅の所在地
5.営業所又は事務所を設ける場合は、その名称、所在地
6.委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容
7.【個人の場合】生年月日、性別
8.【法人の場合】役員の生年月日、性別
9.未成年の場合は、法定代理人の生年月日、性別
(法定代理人が法人の場合は、役員の生年月日、性別)
10.【法人の場合】法人番号
11.住宅宿泊管理業者の場合は、登録年月日、登録番号
12.連絡先
13.住宅の不動産番号
14.住宅宿泊事業法施行規則第2条に掲げる家屋の別
15.一戸建ての住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎の別
16.住宅の規模(面積や間取り等)
17.住宅に人を宿泊させる間不在とならない場合は、その旨
18.賃借人の場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨
19.転借人の場合は、賃貸人と転貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨
20.区分所有の建物の場合、管理規約に禁止する旨の定めがないこと
21.管理規約に住宅宿泊事業について定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がない旨
4-2.届出時の添付書類
届出する場合に届出書に必要な添付書類として下記の書類が必要です。
【法人の場合】
1.定款又は寄付行為
2.登記事項証明書
3.役員が、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
4.住宅の登記事項証明書
5.住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類
6.「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類
7.住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積)
8.賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類
9.転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類
10.区分所有の建物の場合、規約の写し
11.規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
12.委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し
13.欠格事由に該当しないことを誓約する書面
【個人の場合】
1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
2.未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書
3.欠格事由に該当しないことを誓約する書面
4.住宅の登記事項証明書
5.住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類
6.「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類
7.住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積)
8.賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類
9.転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類
10.区分所有の建物の場合、規約の写し
11.規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
12.委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し
4-3.添付書類に関する補足事項
【法人・個人共通】
添付書類の記載言語について |
届出書の添付書類は、日本語または英語で記載されたものに限ります。 英語の場合は、日本語による翻訳文を添付する必要があります。特別の事情で届出書に添付する書類が日本語又は英語で提出できない場合は、その他の言語で記載された書類に日本語による翻訳文を添付することにより提出することが可能です。 |
官公署が証明する書類の有効期間について |
官公署(日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関を含む。)が証明する書類は、届出日前3カ月以内に発行されたもの、官公署から発行された書類を提出する必要があります(写し等は認められません)。 |
「欠格事由に該当しないことを誓約する書類」について |
誓約書については、各様式を用いるほか、法に規定する欠格事由に該当しない旨を記載した書面・署名又は押印があるものが該当します。 様式A(法人の場合):以下の表の2.から4.、7.及び8.に該当しない者であることの誓約 様式B(個人の場合):以下の表の1.から6.及び8.に該当しない者であることの誓約 |
欠格事由 |
1.心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通省令・厚生労働省令で定めるもの 2.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 3.住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者 4.禁錮以上の刑に処され、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処され、その執行を終わり、又は執行をうけることがなくなった日から起算して3年を経過しない者 5.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という) 6.営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が1.から5.のいずれかに該当するもの 7.【法人の場合】役員のうちに上記1.から5.までのいずれかに該当する者 8.暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
「入居者募集の広告その他それを証する書類」について |
「入居者の募集が行われていることを証する書類」とは、当該募集の広告紙面の写し、賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写し、募集広告の写し、募集の写真その他の入居者の募集が行われていることを証明する書類を指します。 なお、賃貸(入居者)の募集をしていることについては、都道府県知事等が必要に応じて確認することがあります。 |
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていることを証する書類」について |
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていることを証する書類」とは、届出住宅周辺における商店で日用品を購入した際のレシートや届出住宅と自宅の間の公共交通機関の往復の領収書の写し、高速道路の領収書の写し、遠方の場合は航空機の搭乗チケットその他の随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていることを証明する書類のことを指します。 |
「住宅の図面」について |
「住宅の図面」は、必要事項が明確に記載されていれば、手書き図面でも差し支えありません。 「住宅の図面」には、以下について記載が必要となります。 1.台所、浴室、便所及び洗面設備の位置 2.住宅の間取り及び出入口 3.各階の別(階層表示) 4.居室、宿泊室、宿泊者の使用に供される部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積 5.非常用照明器具の位置、その他安全のための措置内容等、安全の確保のための措置の実施内容について明示すること |
「賃借人が承諾したことを証する書類」「賃借人及び転借人が承諾したことを証する書類」について |
「転貸を承諾したことを証する書面」は、住宅宿泊事業を行うことが可能かどうかについて明記されている必要があります。賃貸借契約書にその旨が明記されていない場合は、別途、賃貸人等が住宅宿泊事業を行うことを承諾したことを証する書類が必要です。 |
区分所有の建物の場合の添付書類について |
以下の順で添付書類を確認してください。 1.マンション管理規約の専用部分の用途に関する規約の写し(該当者全員) マンション規約において、住宅宿泊事業を許容する旨の規定となっている場合は、追加の書類は不要となりますが、住宅宿泊事業について定めがない場合においては、次の書類を添付する必要があります。 2.届出時点で、住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、または住宅宿泊事業法成立以降(平成29年6月以降)の総会および理事会の議事録等 |
「管理業者から交付された書面の写し」について |
「管理業者から交付された書面の写し」とは、住宅宿泊管理業者と締結する管理受託契約の書面の写しを指します。 |
「消防法令適合通知書」について |
住宅宿泊事業を行うにあたって、消防法令に適合している必要があります。消防法令適合状況の確認の手続(消防法令適合通知書の添付など)については届出住宅を管轄する都道府県知事等に確認が必要です。また、消防法令において必要となる措置についても、併せて届出住宅を管轄する消防署等に確認が必要です。 |
「住民票」について |
提出された届出書に基づき、都道府県知事等が住民基本台帳ネットワークシステム(以下、住基ネット)を利用して届出者の実在を確認することとしています。住基ネットの活用による届出者の実在が確認できない場合等には、住民票の提出が求められる場合があります。 |
5.まとめ
今回は住宅宿泊事業の概要から必要となる書類についてご紹介しました。今後も複数回にわたってご紹介いたします。住宅宿泊事業届出以外にも、次回ご紹介するテーマである住宅宿泊管理業や旅館業許可、特区民泊についても全国対応しております。必要書類の収集から専門スタッフがスムーズな手続きをサポートいたします。ぜひお問い合わせください。
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